筋筋膜性疼痛症候群(MPS)では何故、広範囲で痛みを感じるのか?

今回は何故、筋筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome,MPS)になると広範囲で強い痛みを感じるのかを説明します。(本ページは普通の人にわかり易く説明をする事を目的にしており、生物学的に厳密に説明をすることを目的としていませんので、必要に応じて他の学術書を参照してください。)

痛みを感じる基本的なメカニズム

まず、筋肉内に発生した痙攣(けいれん)、硬直を起こしている場所を「索状硬結(さくじょうこうけつ)」などと呼びます。この索状硬結部位では筋肉が痙攣、硬直を起こしているので当然、血の流れが悪くなっており、周囲の細胞に酸素を十分に供給できなくなります。

細胞に酸素が十分に供給できないと、警告信号として血液中の血漿(けっしょう)から、発痛物質(例えばブラジキニン)と言われる物質が出てきます。実はこの発痛物質が発生しただけでは人間は痛みを感じません、人間の体にはこの発痛物質を感知するセンサー(ポリモーダル受容器と呼ばれます)があり、このセンサーが発痛物質を感知すると、それが電気信号として神経を伝わり脳に達して初めて人間が痛みを感じます。

反射

通常はこれで終わりなのですが、人間には反射というメカニズムがあります。これは、特定の刺激に対して、無意識のうちにおきる反応の事を言います。例えば、我々が暗い場所から明るい場所へ移動したときに瞳の瞳孔は瞬時に小さくなります。誰も意識をして瞳孔を小さくしていないですし、逆に大きくしよう、小さくしようと思ってもコントロールできないですよね。これを反射と言います

このように人の意識をしていない所で体をコントロールしている部分が脳や脊椎となります。(尚、この瞳孔の例は脳幹という脳の一部が反応をする脳幹反射と呼ばれる反射です)。筋筋膜性疼痛症候群(MPS)のケースの場合は痛みを感じた脳や脊椎が人の無意識のうちに、自律神経(人のコントロールできない神経)の一つである交感神経を働かせる事により、既に筋肉が痙攣、硬直している場所やその周辺の血管を収縮させて、再びその部位で酸欠状態が起き発痛物質が発生して脳が痛みを感じます。

この状態になると完全に痛みの連鎖状態となり一箇所の異常が、広範囲に痛みを感じさせます。これが、筋筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome,MPS)が広範囲に強い痛みを感じさせるメカニズムと考えられています。(ちなみに、このように広範囲に痛みを感じさせる、索状硬結部位を発痛点(トリガーポイント)と呼びます)

それにしても・・・

それにしても、特に米国を初めとして日本でも、筋筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome,MPS)が、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、すべり症、坐骨神経痛、半月板障害などの神経を圧迫していることにより、神経の行き先で痛みが発生していると言う病気に誤診されているという警告が上がっているのですが、その正当性について議論、検討さえされていない現状がありますね。

しかも、筋筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome,MPS)の場合はここまで生理学的にミクロレベルでメカニズムが解明されていて、一方で上記の神経を圧迫して痛みが発生されていている病気については、ミクロレベルでの痛みが発生する生理学的なメカニズムは見た事も、聞いたことも無いような状態で、更に症状だけみても素人でも首をかしげるような、あまりにも多くの矛盾があるにも関わらず・・・。今からでも遅くないので、問題が大きくなる前に、とにかく早く検討が開始される事を願います。

参考文献


更新日/Modifed :2009-11-01 (日)
作成日/Posted :2009-09-22 (火)